タターサルシファカを訪ねて


2000年7月29日(土)

 Tanaから飛行機でSambava着。バニラの匂いが漂う町中を通り、ホテル着。早速、ホテルスタッフにガイドがいないか聞くが、色よい返事を貰えず。とりあえず、滞在期間中の4WDの手配だけはお願いする。今回の主目的はDarainaという町の周辺にしかいないタターサルシファカ(学名 Propithecus tattersalli)を見ること。数年前に本で見て以来、非常に気になっていたレムールである。普段マダガスカルに来るのがGWなので道路状況が分からず来なかったが、今は7月、道路状況も好転しているはずと思う。
 午後、到着した車から降りてきたマダガスカル人がDiego Suarezから来たガイドと判る。早速、都合を聞くと火曜日から空いているとのこと。また、目的地のDaraina方面にも詳しいらしい。しかし、タターサルシファカについては情報をもっていない。やはり、相当マイナーな存在のようだ。また、到着した車は泥だらけでそこまでの道の状況は悪路であることが予想される。とりあえず、月曜日の夜の再会を約束する。

2000年8月1日(火)

 Sambavaに着いてから3日。今日からフリーになったガイドのBrunoと早速現在借りているピックアップ車の代わりとなる4WD車を探す。しかし、旅行代理店、レンタカー会社などに聞いても車が見当たらない。どうやら、日本の大使が訪Sambavaしていて数少ない4WD車を全て借り上げたらしい。結局、見つからずそのままピックアップ車で向かうこととする。
 昼食後、Vohemarに向けて出発。道路は舗装されていて非常に良く快適に走れる。スピードが出すぎるみたいで途中でトラックが横転していた。自分は荷台に乗り、横になって空を見上げながら行く。
Vohemar
Vohemarの町
 約3時間の走行でVohemar着。今日はここで一泊することとし、明日に備えて旅行中の食事の買出しに行く。たまたま入った商店の中国人と話していて「これからDarainaにレムールを見に行く」というと、「あそこには珍しいのがいて研究者が入ってるんだって?」。初めて聞くタターサルシファカの情報にいろいろ聞いてみるが詳しくは知らないようだ。
 そのまま、ホテルへ行き宿泊。



2000年8月2日(水)

 朝8時にDaraina方面に向けて出発。今日の目的地はまずDarainaの手前の村、Antsahampanoである。参考にしたガイドブック「Lemurs of Madagascar」によるとここの近郊が一番タターサルシファカが見やすいらしい。
Vohemar-Antsahampano間の風景
Vohemar-Antsahampano間の風景
 Vohemarを出てすぐ昨日の舗装路からAmbilobeに向かう道に入る。下はダートだがここ数日の晴天のせいか、心配していた泥道にはなっていない。しかし、車は揺れるので荷台で寝ていると結構背中が痛い。周りは完全に林は無い。2時間くらい過ぎると周りの山々に林が残っているのが見える。景色的には以前見た北部の景色に似ている。距離的にはそれほど離れてないので当然とも言えるが。
 3時間くらいたったところで車が停車する。Brunoが「Antsahampanoだよ。」と言う。何も無い小さな村である。小さな子供が我々が乗ってきた車のカーステレオの音楽に合わせて踊っているのがとてもかわいい。
 早速、村長に会いに行く。お土産にと持ってきた手回し式ライトを渡し、ガイドブックを見せると、「このレムールはこのそばにいる。案内する。」と言う。ついに見れると胸が高鳴るのが自分でも良く分かる。少し、話をするがここに来た観光客は初めてだと言っていた。ここを紹介していたガイドブック「Lemurs of Madagascar」の著者はここに研究でずっと滞在していたとの事である。
 村長自ら、車に乗り込みタターサルシファカがいると言う林に向かう。途中で車から降り、道路脇の林に入る。こんなメインロードのすぐ脇にいるんだ。林は以前歩いたAnkaranaの林に似て典型的な北部乾燥林である。林の中にはアデニア、シフォステマなども散見される。その中を鳥がさえずりながら飛び回っている。聞こえるのはそのさえずりと風の音だけである。
Antsahampano近郊の林
Antsahampanoの林
 林の中を歩き回るが何も動物はいない。村長は「いつもこの辺にいるのだが」と言いつつ、いろいろな所に案内してくれるが見つからない。2時間ほど歩き回ったので休憩にし、昼食をとりながらどうするかを相談する。村長は「自分の知っている場所にはいないから、この辺を良く知っている若い人間を連れてきて戻ってこよう」といい、われわれも了承する。
 村に戻るのに林の中の涸川を歩く。やっと、林を抜けようかというところで、村長がいきなり指差す!タターサルシファカがいた!大きさは50cmくらいで、本当に頭が金色というか黄色のレムールである。ガイドブックに書いてある通り美しい。人間が珍しいのか、きょろきょろと我々を見ている。
 数分間、そのままの状態で見ていたが、飽きたのかいきなり飛んで見えなくなった。追跡しようとしたが林の中に姿を消してしまった。Brunoの話では反対側には子連れのがいたとの事。見れず残念なことをした。
 そのまま村に戻った後、約11km離れたDarainaの町へ向かう。ここはAmbilobeからVohemarに抜ける国道(RN5a)沿いの町でHotelyがいくつか点在している。が、町の大きさは 200mくらい行ったら町から抜けてしまうような小さな町である。とても埃っぽく、また、犬があちこちでぶらついている。時折タクシーブルースやトラックが走り抜けて行く。
 町には外国人の泊まるようなホテルは無く、食堂と併設の簡易宿泊施設がついた Hotelyしかない。一番いい Hotelyはいっぱいだったが、別な雑貨店、食堂と併設のHotelyが客間を貸してくれるという。そこはきれいに飾り付けられた部屋で昨日泊まったホテルよりも格段にいい。蚊帳をかけるところが無いのが気になるが。
 食事後、Brunoが隣のHotelyの客と話をしているので見ると、外国人二人だ。聞くと、スペイン人でやはりタターサルシファカの研究者だった。早速、このあたりの情報を聞く。彼らは、町の南側の林を一日中歩き回って1グループだけ見たとの事。僕らは今回はラッキーだったようだ。
 宿泊するHotelyに戻ってビールを飲みながら持参した「Lemurs of Madagascar」を眺めていると、先ほどの研究者に同行しているガイドや現地の少年が集まってきた。みんなで本を見ては、いろいろと話し合っている。聞くと、この南の林にはアイアイがいるらしい。興味はあるが、今回は時間的余裕が無く断念。次回?の来訪時に行くことを心に誓う。
 Hotelyの女の子にビールを頼むといきなり流暢な英語で「何で片言の英語しかしゃべらないの?」と聞いてきた。「マダガスカルじゃ通りがいいから」と言うと「何だ、ちゃんとしゃべれるじゃない」。聞くとここの学校では英語を教えてるらしい。マダガスカルで行った中では一番英語が通じる町だ。
 時間も遅くなり、酔ったのでベッドに入る。しかし、一晩中Hotelyのどこかで話し声が聞こえてよく眠れなかった。

2000年8月3日(木)

Daraina
Darainaの町
目を覚まして外に出ると朝もやが立ち込めている。もう、トラックなどは出発の準備中だ。とりあえず朝食をとる。Brunoが町の少年を二人連れてきてくれた。今日は昨日とは違う林を歩くようだ。早速、車で出発。途中で道路からはずれ、山の尾根伝いに林の方に道無き道を入る。もう行けなくなったところで車を降り、歩く。林の様子は昨日とはそれほど変わらない。バオバブがあちこちに生えているのが違うくらいだ。
 入って、ちょっとした所でまたタターサルシファカを見かける。しかし、今度はすぐに跳んで消えてしまった。ゆっくり見れないのは残念だが、この林にはたくさんいそうだ。しかし、その後はついに姿を見かけることは無かった。
金採掘現場
金採掘現場
 林を歩いていると、地面のあちこちに穴が空いている。何かとBrunoに尋ねてみると「金鉱だ」。足元を良く見ながら歩くと、金らしい光るものがあった。さらに歩いていると女性が土を水で洗っているのに出会った。しかし、聞くとここはもう既に金はそれほど採れないので、ほとんどの人は別なところに移ったとのこと。自然保護の面からはほっとする。
 予定ではあと1日いるつもりだったが、天気が悪くなりそうなのでSambavaに向けて帰ることとし、タターサルシファカのいる林に別れを告げる。最後に車の止まっている山の尾根から見ると林は完全にパッチ状に分断されていて三分の一程度しか残っていない。一番まとまって見えるのが今日訪れた林である。
 Darainaに戻りすぐ出発。帰路途中から雨が降り出し、Vohemarに戻る頃にはかなりの雨になっていた。道が悪くなる前に帰れた事に感謝しつつ、Sambavaに向かう。帰路の途中ではではもう既に次は何を見に行こうか考えていた。次はペリエシファカかパキポディウムブレビコウレかそれとも・・・・


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